7月 202009
 

「そを三者という」 というのはどういう意味であろうか。 ふと思い出したため少しネット上で調べてみた。 こういうことを初めて聞いたのは,学生時代の医学史の講義だったと記憶している。 江戸時代以前は,医者というのは生産を目的としない下賎の職業であり, 士農工商を外れたアウトカーストだったと。 ネット上では士農工商の工あたりだとか,僧侶や公家と同じく士より少し格下ぐらいという意見もあった。 また近年は予備校の先生あたりがずいぶんと肯定的にとらえた意見として五者なる考え方もあるようだが。 本来医業はそもそもかなりシャーマンで呪術的なものであり,その意味ではカーストを外れたものであろう。 江戸時代でも,免許制度はなく,今日から医者だと言えば医者になれたようである。 しかしながらそこには職能集団としてのギルドがあり,医業自体も何何派といった流儀があったようだ。 また身分に置いても,江戸時代以降はそれぞれの階級において特権的にふるまう様になり, 士族階級においては,御典医集団などは準士族,町人階級においては町医者などの準町人, カースト外ではかなりシャーマンな存在だったと思われるが, 結局純粋にどの階級に属していたわけでもなく, 属している階級によって医者といっても同じ職業といえるかどうかすらも疑問である。 江戸末期に西洋医学が入ってきてから,すでにヨーロッパでは職能集団としてある程度の社会的地位があったっために,日本でも次第に社会的地位が上がってきたようだ。 太平洋戦争前後を挟んで過去最高のステータスとなったが,戦後の国民皆保険に縛られ, 自由業というポジションを手放し,赤ひげ医者も消滅した。 現代では公共性の強い職業として,国家管理がますます厳しくなる方向にあり, サラリーマン化し,モチベーションを保つのが難しい職種となった。 とはいえまだ仕事もあり,恵まれているようにも思えるが,医師増産時代も,もうそこまで来ている。 まあ,どんな時代においても,人が相手の人気商売としてとらえれば,三者であることには違いないが, 他の二者と比べて腕が悪ければ,人が死ぬと考えると,三者っていうのはちょっと違うかも。 今思えば,医学史の恩師が言いたかったのは,謙虚であれということに本質があるのかも。